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暖かさを科学する話から

2021.01.28

最近、雑誌や機関紙に投稿の依頼が続きました。掲載されるのはもう少し先なので、その時ご案内させてください。ここでは編集者さんと校正の段階でのお話です。
北海道の住宅の断熱や換気に関するお話です。小見出しが
「外は寒いのに、家の中ではTシャツでアイスクリーム」
実に北海道の住宅らしさを表す表現で、本州のお宅よりはるかに冬暖かいことが伝わります。
もちろん「ステテコでギンギンに冷えたビール」でも確かに格別にうまいのですが、まじめに考えてみました。

撮影当日 外は猛吹雪で外観全体の撮影は断念しました。

 話は長くなります。
北海道の家と本州との大きな違いは、出力の高いストーブやボイラーなど暖房機にあります。建物の断熱性は、以前よりかなり高くなってはきたものの、北欧やドイツ、スイスと比べて胸を張れる性能のものは新築で数パーセントあるかどうかです。
この程度の断熱性能と暖房機の組み合わせは、居間に置いたストーブなどの熱を直接感じられるので、とても暖かく感じますが喉が渇くので、ビールなど冷たい飲み物が欲しくなります。しかしその時、快適と感じるリビングの温度が24℃以上とかなり高めとなるのが一般的で乾燥が進み、風邪をひきやすくなり、かつエネルギーの消費量が多いか、もしくは皆がいる部屋だけ暖かくして、ほかの部屋は寒く、結露が起きているか、ということになります。つまり「外は寒いのに、家の中ではTシャツでアイスクリーム」は寒冷地で住環境の悪い家の象徴なのです。




 

外はホワイトアウトでも、暑くも寒くもないダイニング

フームの設計では、できるだけ寒さを感じない範囲で温度を低めに設定することにより、乾燥感を減らし、さらに消費エネルギーを劇的に減らすことができます。ちなみに撮影されたお宅は室温全体ほぼ同じで19.5℃~20℃くらいです。断熱性が低い建物の場合、この温度ではとても寒く感じるはずですが、これは建物の性能による体感温度の違いから来ます。
結果的にこのお宅は真冬にTシャツでアイスクリームの生活には向かないことになります。
「外は寒いのに、家の中ではTシャツでアイスクリーム」
は、現状の北海道の家の特徴をとてもうまく表していますが、これから目指すべき持続可能な家つくりの方向性は、新たなキャッチコピーが必要になります。
宮島



二階は36畳のワンルーム まるで体育館のよう。床材は道産木材でとても柔らかく暖かいトドマツの30㎜の無垢板