SDGs勉強会で環境とエネルギーのお話

2021.01.18

2017年からコープさっぽろの依頼で野幌のエコセンター敷地内にエコステーション施設整備にかかわり、施設設計と周辺を原生種の樹木で森を作る計画を立ち上げました。「フーム空間計画工房」で企画した施設周辺の森つくりを「子供と作ろう種から育てる未来の森」が進めてきました。そこでコープのSDGsキックオフイベントとして建築、環境、エネルギーについてお話させていただきました。
今回は新型コロナ禍のなか、関係者のみの非公開で行われました。

建築に関して、まず室内環境の話
建物を設計するにあたり、形だけでなく熱や空気の流れをしっかりとイメージします。
冬季間 室内の空気は、体感温度を下げたり過乾燥とならぬように、ゆっくりと必要最小限入れ替えれながら、空気環境を良質に保たなくてはなりません。
そのためには空気が汚染されない(においや排気を発生させない)低いところから吸気し、トイレ、水回りなどの高い位置から排気する流れを作ります。
一方夏には日射遮蔽を徹底しながら、室内で発生した熱を速やかに排気する計画を立てます。
暖房計画の基本は温風を出さないこと、輻射熱でまんべんなく温めることです。ただ暖房設計は建物の断熱性能によって変わります。断熱性能は高いほど良いと思って構いません。ただしっかりとした換気計画が必要です。

建物の構造材、造作材についてです。
より環境にやさしい建築を考えると、できるだけ再生可能な材用でさらに地域に近いとなると、地産の木材くらいしか思いつきません。今回は北海道産のカラマツを採用しました。カラマツはとても強い材料でありながら、ねじれや割れなど癖が強くこれまで敬遠されてきました。しかし乾燥技術が高まったことと、施工上の工夫で解決を試みました。独立柱は人工乾燥させず、背割りをして丸太のままで使いました。背割りとは丸太に縦に割れ目を中心に向かって入れることで、ひずみを割れ目が吸収して他に悪影響を与えないようにすることです。外装仕上げにも製材した残りの縁材を有効に生かしました。

エネルギーについて

SDGs「エネルギーをみなに、クリーンに」というと「CO₂を発生させる火力発電をやめて、太陽光や風力を」「発電時にCO₂を発生させない原子力もある程度必要」という話が出てきますが、原点に戻って考えてみましょう。SDGsの原点は「私たち人間が地球環境の中で、多様な生命と共生し、永く、幸せに暮らす」ためにどのように生きるべきかを考え、行動することです。

身近に利用しているエネルギー、電気を例に原子力発電は100万キロワットの電気を供給するため、300万キロワットの熱を発生させ、200万キロワットの熱を海や大気や送電中に捨てます。一般的な火力発電も同様で、燃料の持つ熱エネルギーの約2/3を排出し環境に悪影響を与えていると考えられます。燃料となるウランや化石燃料は極めて密度の高いエネルギーで地球上の偏った地域に埋蔵されています。そのため資源をめぐる戦争、難民問題、極端な貧富の差、環境汚染の原因となり、その利権にからむ多国籍企業が巨大な障壁となってSDGsのゴールの前に立ちはだかっています。

311以降日本でも大規模な太陽光、風力発電、木質バイオマス発電など「自然エネルギー発電」が増えていますが、大企業の投資に見合う高額な再生可能エネルギー固定価格買取制度によるものです。しかし野生動物や森林など生態系への影響が大きいものが多く、「北海道大規模停電」時に地域に供給されないなどの問題点が露呈しました。

それでは「エネルギーをみなに、クリーンに」のためにはどうしたらよいのでしょう。社会全体がまず取り組むべきは、全原発を止め、代わりの電気エネルギーを探すのではなく、電力消費を減らすこと。過渡的ですが現状の火力発電を、効率の良い発電にかえていく。そして中央にエネルギーを依存した社会から、必要なエネルギーは自分たちで供給する小規模で多様なエネルギー」で成り立つ社会に変えていくことです。

エネルギーを使うこと自体が自然からの搾取ですから、天然資源の自然増の範囲の中でエネルギーを賄う生き方が求められます。例えば林業が盛んな地域では、未利用木材を燃やし暖房、給湯などで地域の人々に熱供給することができます。北海道では、冬季の氷や除雪の雪を通年利用した野菜の貯蔵庫や発酵食品の熟成庫があります。また飛躍的に高い断熱性を持つ建築も徐々にできてきます。そこで大切なのは地域のエネルギーと技術を活かす知恵です。

最後に改めて肝に銘じるべきことを確認します。SDGsはあくまでも人間社会が作った手段です。常に「私たち人間が地球環境の中で、多くの生命と共生し、永く、幸せに暮らす」という原点に戻り、誤りがあれば修正しなくてはなりません。手段が目的になってはならず、自分で良く考えて行動しなくてはなりません。

今回は密になるのを防ぐために、立席で距離を保てお話しました。講義室で着席で行うよりリラックスした雰囲気で、参加者からの質問も活発にでて活気のある会になりました。

最後に皆で、建物前で過去3年間に植えた苗木の生長具合を測定しました。種子から発芽させた苗の多くが3年目から特に成長が良くなってきました。この様子ですと、10年も経つと若い雑木林に建物が囲まれた景観が見られそうです。