ギャラリー
ニセコウパシギャラリーとニセコ松風
写真:渡辺洋一

upas(ウパシ)ギャラリーと和菓子の松風のエントランス。庭を望みながらウッドデッキを歩く。一歩敷地に入ると異次元の空間

傾斜のある庭側から望む建物の様子

建設から3年ほど経った道路側正面の様子。建設直後にオーナーが芽を出したイタヤカエデなど自然樹木の幼木を建物周辺に植えました。あれから10年ほど経った今と同じアングルからの写真は次に

現在のupasギャラリー・松風の様子。自然樹の幼木たちは見事に成長し、景観を形成している。建物の周りに自然樹の苗を植える庭づくりが当たり前になることを願っています

ギャラリーから望む庭。木々の合間から羊蹄山を望む。「木々の合間から見えるから美しいんだよ!」よく木が邪魔だから切ってしまおうという人が多く、実は私も理解できないでいました。スパッと言い放った渡辺洋一氏の美意識がすばらしい

落葉の季節。庭から望む羊蹄山

庭に自然と芽を出していたイタヤカエデの木は、今では立派に成長し、紅葉は人の目を癒してくれる

北海道の広葉樹で知人が作る木の器を並べて

秋に庭から望むupasギャラリー・松風

夕景の様子

夕景の様子 庭で夕暮れまでの時間を楽しむ

窓からのぞくギャラリーショップの様子

冬のギャラリー。ここで撮影や編集会議が行われる

真冬のニセコの雪に耐える建物の様子。豪雪の中で無落雪の構造としている。積雪には耐える設計であるが、雪庇は注意が必要です

冬のエントランスから庭を見る

エントランスでスキーを履いて、庭を散策する。スキーは生活の一部となっている

真冬の庭から撮る羊蹄山。このようなコンディションはめったになく、その中で生活する人の特権
DATA
北海道倶知安町・ニセコウパシギャラリー ニセコ松風
家族構成/本人40代、妻30代 構造規模/木造(在来工法)・2階建て 延床面積/155㎡(約46.88坪)(カーポート別・物置含む)<主な外部仕上げ> 屋根/アスファルトシングル、外壁/トドマツ板張、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:木製サッシ(トリプルガラス)<主な内部仕上げ> 床/トドマツ無垢板、壁/プラスター 藁練込、天井/構造材あらわし<断熱仕様 充填断熱+付加断熱> 基礎/FP(B3)100㎜打込、壁/高性能グラスウール24㎏105㎜+50㎜、屋根/高性能グラスウール24㎏105㎜+105㎜<暖房方式> パネルヒーター
COMMENT
私が20年以上遠ざかっていたスキーに40代後半にはまってしまったのは、写真家 渡辺洋一さんのおかげです。当時バックカントリースキーの世界では知れ渡っていた方でしたが、私は知らず、冬の建築予定地の状況を見に行った時に雪山に連れて行かれ、パウダースノーを初めて滑り、魅せられてしまいました。
渡辺さんには周りの空気に振り回されない独自の審美眼があります。特に環境や景観に関する問題意識や、人の手仕事に対して共鳴するところが共通していたこともあり、私の設計スタイルにも目を留めていただけたようです。
この建物には、渡辺さんの写真を展示する「upasギャラリー」とともに、1階には「和菓子工房 松風」があります。そこには和菓子職人である妻の渡辺麻里さんの和菓子教室を開くためのコーナーが用意されています。ファンの方はもうご存知かもしれませんが、現在は完全予約制で開催されています。
打ち合わせ中から細かな設計の話よりも、木を使う意味、景観、環境、エネルギーについてよく話し合いましたが、渡辺さんの発信力はさらに広がり、中でも特に力を注がれているのが[Stuben]マガジンの発行です。雪国で暮らす中ではぐくまれた生活、景観、美術や文学などの文化に着目した興味深い本です。特に冬をより楽しむことが持続可能となるための環境、エネルギーについて、オーストリアやスイスまで取材に行くなど、とても読み応えのある本ですので、皆さまにも是非お手に取っていただきたいと思います。このような活動があのニセコの家から生まれたことを大変嬉しく思っています。
http://stuben.upas.jp/
私たちもささやかながら協力させていただいた5号です
http://stuben.upas.jp/magazine/05/