ギャラリー
青森の二つの家

「津軽の家」N邸。深い軒が、杉の荒木の壁面を風雨・風雪から守る

南西側からの外観。庭は仕上げの途中

庇を張り出し、大きな軒先空間をつくった

玄関入り口の様子。光の陰影に心落ち着く

玄関からリビングへのアプローチ。段差をつけて、心理的な場面転換を図る

リビングから子ども室へ。1~2階の空間をオープンにつなぐ階段

2階ロフト。変化に富んだ、子どもたちのための空間

弘前市T邸。広々とした敷地に佇む。特徴的な大屋根を持つ外観が、整えられた庭により映える

庭の木が芝生にやわらかく影を落とす。開口部は奥様が「性能の高さとデザイン、雰囲気、すべてに惹かれた」という木製サッシ

薪ストーブも高性能住宅では空気の流れに影響を与えるため、使い方をきちんと守るという前提で採用。おかげで訪れる人々に「空気がきれいですね」と言われるそう。薪には香り高く火の持ちが良いリンゴの木を使用している

華美な装飾を排除し素材を生かした空間に、薪ストーブの炎が美しい。住まうほどに魅力を増していく

使い込むほどに風合いが増す木のキッチン。レンガを積んだ壁も「油跳ねや汚れが目立たなくてとても楽」と奥さん

洗面所からトイレへの様子。小窓からの採光で閉塞感はない

玄関から仕切りなくつながる内部空間。吹き抜けに沿うように階段を上がると、2階には家族それぞれの個室がある

寝室の天井からは、吹きガラスのシェードを吊るして
DATA
津軽の家・N邸
家族構成/夫婦、子供2人
構造規模/木造2階建て
延床面積/155.6㎡(約47坪)
青森県弘前市・T邸
家族構成/夫婦、子供3人、両親、祖母
構造規模/木造2階建て
延床面積/217.33㎡(約65坪)
COMMENT
2003年末、私たちが札幌で建てたお宅に、弘前から泊まりに来られたNさんご家族。是非に!ということで新築の計画が始まりました。当時北海道を中心に寒冷地住宅の研究、啓蒙を進めていた団体から弘前の良い工務店を紹介され、施工を依頼しました。
有名な津軽リンゴ畑に隣接する団地の中の敷地は、比較的ゆったりと区画されています。ご夫妻が植栽に詳しく、建物との一体感を感じさせるように平屋+ロフトという構成としました。
新たなテーマは「住宅と健康」。Nさんからある医師を紹介されましたが、この出会いが後のフーム空間計画工房の設計に大きな影響を与えることになりました。アレルギーや電磁波に対し、徹底的に安全な建材を選ぶことはもちろん、視覚的に神経を逆なでしないこと、暖房、換気の健康に与える影響なども学びました。これらの考え方は、私たちのデザインにとってすべて違和感なく受け入れられるものでした。
特に体調に敏感なNさんからは「引っ越してから以前より目覚めがすっきりしたことを実感しています。家族が風邪などで通院することがめっきり減りました」と感想をいただいています。
その後、Nさん宅の周りを時々散策していたリンゴ農家のお嬢さんから、突然連絡がありました。「あんな住宅が建てたいんです!」ストレートな依頼に驚きました。
こちらのTさん宅でも設計の基本は変わらずですが、さらなるテーマは「大家族住宅」です。核家族化が進む中、こちらのリンゴ農家の仕事は、二世帯家族全員で取り組んでいます。さらに祖父母、若夫婦の赤ちゃんまで一緒に暮らします。
完成したのは、家族が集う開放的なLDKと吹き抜けを介して各個室が適度な距離でつながる個性的な住まい。核家族や二世代住宅に感じる問題は、ほぼ解決されました。
もちろん高断熱高気密住宅で、前回と同じ工務店さんとの共同作業です。普段の暖房に加え、リンゴの木を選定した枝などを薪にしてストーブで暖を取る。大半の部屋を温めることができます。大家族で住むということは、特殊な設備に頼ることなく簡単に省エネルギーを実現できます。一つのあるべき住宅の形だと思っています。